車いすに乗せられ、いよいよ手術室へと向かったみな。
手術室の入り口で、バーコードと口頭で名前の確認と、アレルギーについても確認されます。
みなはマンゴーのアレルギーがある、と伝えたため、手術用の手袋がラテックスフリーのものに変更となりました。
みなのマンゴーアレルギーは、食べると喉がかゆくなって、やや息苦しくなり、咳が出るレベルのもの。
マンゴーのアレルギーがある人は、ラテックスにも反応してしまうことがあるそうで、念には念を、ということなのだと思います。
そして、手術用のクリーンキャップという紙製の帽子をかぶります。
(これ、自分で売店で買うんですよ! 用意してくれればいいのに!)
手術室へ! 俎上の鯉の気持ちです…
車いすで手術室へ運ばれましたが、手術代には自分で上ります。
手術台ってテーブルみたいなものかと思っていましたが、眼科の手術台は、歯医者さんの椅子に似た、リクライニング大き目の椅子でした。
手術室に入って、みなが最初に思ったのは、
寒い
ということ。
いや、まじ寒いんです。
たぶん、機械とかがいっぱい置いてあることに加え、暑いと汗をかいたり、感染症の危険が高くなるからではないかと思いますが、とにかく寒い。
思わず「寒い」と口にしてしまったところ、看護士さんが気にしてタオルをいっぱいかけてくれました。
あ、手術室に音楽流れているというのは本当でした!
クリーンキャップをテープで固定され、左の指先にクリップみたいなものをつけられます。
たぶん、酸素濃度とか見てるのかな?
マニキュア禁止と言われていたのはこのためだと思います。
そして、左の腕から点滴が入ります。
たぶん安定剤と抗生剤かなあ。
この点滴がうまく入らなくて、助手の先生がちょっと苦労されていました。
右腕には、血圧計がセットされます。
そして目のまわりをイソジンのついた棒のようなものでゴシゴシとこすられ、顔に右目のところだけがくりぬかれた青い布をかぶせられます。
そして、いよいよ手術開始です。
みなの受けた硝子体手術とは?
手術の内容は、硝子体手術というものです。
目の中には、ゲル状の「硝子体」という物質が存在します。
黄斑円孔は、この硝子体が網膜を引っ張って穴が開いてしまっているので、この硝子体を切除することがメインの術式です。
まず、白目に穴をあけて、そこから機械を入れて硝子体を取り除きます。
ただ、それだけでは空いた穴がふさがらない可能性が高いため、そのあと内境界膜という、網膜の一番上の膜をはがし、網膜を柔らかくします。
最後に、黄斑に空いた穴を抑えるための空気を入れて終了となります。
※昔は傷を縫っていたそうですが、今は器具の進歩により傷跡は縫わずに済むようになっています。この手術で使う器具は、注射よりも細いそうです!
ちなみに、この硝子体手術を行うと、ほぼ確実に白内障が進むため、白内障の手術が同時に行われることが多いです。
ただ、みなは年齢的にまだ大丈夫でしょ
うということで、水晶体はそのまま残すことになりました。
なので、この流れで手術は進んでいきます。
いざ、手術! 先生お願いします……!!
まずは麻酔を注射します。
点眼麻酔に加え、眼球の奥にぐいっと針を入れて麻酔を入れる「球後注射」を行います。
これがめちゃくちゃ痛いと聞いていたのですが、それほど痛みはありませんでした。
先生がめちゃ体重をかけて針を刺すので、なんだか「ずどーん」と重い感じだなあ、と思ううちに終わっていました。
次に、瞼が閉じないように固定します。
これが意外に痛かったです。
何カ所かを金属のフックのようなもので留めたんだと思うのですが、右下だけ引き攣れるような痛みがあり「いてて」と口にしてしまいました。
そのあと、目の上に何かリングのようなものを置かれると、視界はほとんど見えなくなってしまいます。
先生が「ビデオ」というのが聞こえました。
たぶん、手術の様子を録画しているのでしょうね。
後学のためであったりとか、万一の訴訟などに備えているのかもしれません。
あー、訴訟とかそんな事態にはなりたくないなあ、って考えていました。
最初に白目にポートという穴をあけられるのですが、そのプツッという感覚は、麻酔がきいていてもよくわかりました。
「あ、今穴あけたな」というかんじです。
そのあと、何か棒状のものが入ってきて、「ヴィーーーン」と音を立てています。
何か黒い膜のようなものが目の前でひらひらしていて、「これが硝子体なのか?」とぼんやりしながら見ていました。
ぼんやりしているとはいっても、意識はありますし、先生の声も聞こえます。
専門用語なので何を言っているのかまではわかりませんが「○○もっと上げられない?」「上げられないです」というような会話があったので、何かちょっとやりづらかったのかもしれません。
そして、手術室のライトが落とされます。
手術って無影灯の下でやるものだとばかり思っていたのですが、眼科手術はモニタを併用するため、電気を消すんですね。
このあたりからだんだん視界がぼんやりとしてきて、何しているのかわからなくなってきます。
とはいっても、頭は動かせないし(動いたら手術失敗になるので絶対に動けない!)、寒いので手足が冷えるしで、めちゃくちゃ緊張していました。
あとで聞いたところ、術中の血圧が140を超えてしまっていたということで、かなり心配されていたようです。
そして、先生が「BBG」というと、また視界が変わりました。
目の中に緑色のものがもわーんと広がったのです。
後で調べたところ、BBGは内境界膜を染色するための薬剤だったようです。
そこで先生が「あー、これ剥がせないな」という声が聞こえました。
え? え? 剥がせない?
剥がせないってどういうことだ……!
何か状況が悪いのか……!?
しかし、手術中なので何も聞くことはできず……。
何度かBBGを流し込まれます。
先生が「30Gのあるかな」と言ってます。
現在一般的な手術器具の太さが25G~27Gですが、それよりも細いものを使う必要がみなの目にあるのだろうか……。
そんなことを考えていたら、電気がついて、手術は終了。
最後に空気を入れるのですが、いつ空気を入れられたのかわかんなかったなあ……。
手術終了! その時の感想は……
すごい勢いで顔の布をはがされて眼帯を貼られて、「終わりです」と言われ、点滴が付いたまま、自分で手術台から車いすへと移動します。
安定剤が入っているので、ちょっとぼーっとしていますが、普通に歩くことはできそうです。
そこでみなが聞いたのは「何分でしたか?」という質問。
もう終わったんだから何分でもいいじゃん、と思いますが、長かったのか短かったのか、自分では全然感覚がなかったので、つい聞いてしまったのだと思います。
先生が時計を見て「35分でしたね」と言ってくれました。
うーん、長いのか短いのか、よくわかんないです。
術前に30分くらい、と聞いていたので、ああ、まあそんなもんかなと思いました。
車いすに乗せられたら、顔は下向き。
先生が「腹臥位、左右横向きで」と言っていた気がします。
黄斑円孔は、目の一番奥にあるところの穴を軽い気体が上昇する力でふさぐため、術後はうつむきの姿勢が基本となります。
なので、それを耳にした時は、「あれ? うつ伏せだと思っていたのに」と不思議な気持ちでした。
しかし、それを質問する余裕もなく、みなは手術室の外へと運ばれます。
そして手術室から出たみなに「お疲れさまでした」と声をかけてくれた看護師さんに、みなが口にしたことは……
めっちゃトイレ行きたい。
でした。
寒かったんだもん!!!
手術室そばのトイレに連れて行ってくれたよ!!
ありがたい……!!
そしてここからは、みな下向きの日々が始まります。